国語科授業研究講座(全十巻):概要

関連項目

国語科授業研究講座(全十巻)発刊のことば

国語科の授業に、分かりやすくて面白い「上」の授業と、一見わかりやすいが面白くない「並」の授業とがあることに気づいたのは、30歳のころであったろうか。両者の違いが、教材に鋭く切り込んで感動に迫るか、初めから順々にあらすじをたどるかに起因することを知った私は、以後、ひたすらに「上」の授業の達成を目ざして、習練に励んだのである。そして、その授業記録をまとめ、『国語科教育の理論と実践』と題して、年1回刊行したのである。

必ずしも計画どおりには運ばなかったが、それでも第16集まで出版を重ねたのは上出来であり、大小合わせて300編を越える授業記録を収めたのである。それに今回、書き下ろした100編を加え、国語科教育の領域別に組み立て直し、『国語科授業研究講座』(全十巻)と銘打って、世に問うことになった。いずれも「上」の授業に通じる、発問計画と板書計画とを伴っており、授業力の向上を目ざしている先生方に資すると自負している。

(平成21年6月)

本講座の特色と活用法

1、全十巻から成る本講座には、小学校・中学校・高等学校の国語科授業実践を通してみちびかれた、300編を越える「授業記録(授業案)」が収めてある。そして、その大半は、授業を支える、「発問計画」と「板書計画」とを伴っている。

1、300余編の「授業記録」は、全十巻の本講座に収められるに際して、国語科教育の領域に従って分類してある。読書子は、興味関心の深いもの、あるいは、緊急の課題に応えるものから、随意に選んで、読み進めてもらって結構である。

1、ただ一つだけ読書子に強く要望しておきたいのは、分量を定めて精読してもらいたいことである。そのためには、必ず身辺にエンピツを用意しておき、重要だと思わる個所に出くわしたら、傍線を引いたり書き込みをしたりすることである。

1、300余編の「授業記録」には、一般の「学習指導案」とは趣を異にする、先生と生徒と問答がせりふやト書きで示されており、芝居の台本の体をなしている。先生になったり生徒になったりして、「一人芝居」を演じてみるとよいであろう。

1、そのとき、とりわけ「発問計画」と「板書計画」とをていねいに照合させるのが、授業力錬成のコツである。そうすると、教材に鋭く切り込んだり、「考える問題」を設定したりする、授業の極意のようなものが、見えてくるにちがいない。

1、300余編の「授業記録」の執筆時期は、50年間にわたっており、形式や表記が必ずしも統一されていない。しかし、その指導のあり方の基本は、不思議なほど一貫していて、読書子が授業の腕前をあげていくに資することを信じている。

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