創立百年史:概要
書評<抄>永田 実(兵庫県立神戸高等学校)
広島大学附属中・高等学校の『創立百年史』(2005年4月、B5判)の上・下2巻の「あとがき」末尾のゴシックに目がとまった。「一章に一週間を要するとすれば、全巻読み終えるのにおおよそ一年かかるであろうが、各章の読了年月日を控えて置いて、後日知らせてもらえるならば、これに勝る喜びはない。」とある。上・下2巻を執筆した小山清氏の真摯な呼びかけである。小山氏は32年間勤務し副校長を勤め、『八十年史』に次いで、『百年史』も1人で執筆されている。両書とも1500ページを単独で著述しており、余人のなし得る業ではない。(中略)
これだけの大作を1人で著述するには、その執筆者の能力・見識・意欲に加えて、体力・健康も不可欠な条件である。小山氏がそれらを具備した存在であることは、ライフワークが『柳田国男八十八年史』全5巻として刊行されていることからもうかがえる。原爆被害のため資料がない中、その発掘を呼びかけ、その成果が『八十年史』となり、さらにその後小山氏自身の経験が熟成されて『百年史』を醸し出したといえよう。今後少なくとも公立校では、学校関係者が1人で執筆するこのような学校史は生まれないのではないか。
『中等教育史研究』第13号(2006年4月、中等教育史研究会刊)